苦い木

ろくやおん。の石田さんが端材で作られるカッティングボード。材料はそのときにあるものを使われるので木の種類が実に多彩です。家具屋に勤めていたことがあるのでほとんどのものは見聞きしたことがある材だったのですが、1点だけ初めましての方がいらっしゃいました。

見たことのない色味で名前も「ニガキ」と聞いたことがない。お伺いしたら、「苦木」と書くそうで、20年以上木工に携わってきた石田さんでもほぼ出合うことがなかった希少な品種だと教えてくださいました。ただ、かと言って高価でもないらしく、鮮やかな黄色を活かして寄木細工や装飾品に使われることが多いとか。(写真1枚目は表、2枚目は同じものの裏)
「苦木」という名前通り口にすると苦く(木ってほぼ苦そうですが)、昔は生薬に使われていて主に胃腸薬や消化薬として飲まれていたそうです。ニガキさんにそんな過去があったとは。人だけではなく木にも歴史ありですね。
濃いめの茶色が目をひくウォルナットや木目の美しいクリなどに比べてニガキは一見地味です。でも、こういうお話を聞いて、一度はお役御免となった端材からカッティングボードに生まれ変わったのだと思うと黄色のグラデーションに愛おしさすら感じます。
あまり見たことがないだけに経年変化も楽しみです。現在在庫がある2点は、どちらも長さ30cm前後、奥行き14cm前後と細長いのでバゲットを切るときに最適だと思います。丸ごと1本のロールケーキやパウンドケーキのカットのときにも重宝しそう。もちろん、おにぎりとおかず、パンとフルーツ、お茶とお菓子などワンプレートとして使ってもおもしろいと思います。細長さを活かして巻き寿司を盛ってもいいですね。
木って陶器や磁器と違って食器同士やカトラリーが触れたときに「かちゃかちゃ音がしないのがいい」と話されていたお客様がいらっしゃって、なるほど、触れたときの感触や見た目だけでなく音までやさしいのだと妙に感動しました。よく木製のものが醸し出す雰囲気を「温かみがある」と表現しますが、香りにも癒されるし、本当に五感すべてで感じていることだったんだなあと・・・あ、違った、味だけは苦いんでした。

ろくやおん。 カッティングボード/ニガキ
写真のものはどちらも ¥2,640

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