クレステッドチャイナ

今日は半夏生でたこを食べる日。関連性のあるものを探しましたが、かするものさえなかったので潔く何の関係もないイギリスのアンティークをご紹介します。

クレステッドチャイナ。クレステッド=crestedは紋章、チャイナ=chinaは磁器の意で、ヴィクトリア朝時代から1930年代頃にかけてお土産用に製造されていたものを指します。
鉄道の発達とともに一般市民も気軽に旅行に行けるようになった時代、各都市や地域の紋章をあしらった小さめのお土産が盛んに作られるようになりました。

ローカルな紋章自体がすてきなのでそれだけでも魅力的なのですが手描きの絵柄にそれぞれ特徴があっておもしろい。さらにその土地でしか買えないものとなると人気を博したのも頷けます。探すと猫や熊など動物モチーフのものも多数。もちろんコレクターが存在します。
手のひらに乗るくらいの小さなカップはイングランド北東部の海岸保養地として知られる都市・ニューカッスル近郊のTYNEMOUTH(タインマウス)という港町のもの。「MESSIS AB ALTIS」はラテン語で「収穫は高きところから」という意味だそうです。
描かれているのは坑夫と漁師。どちらも過酷な職業なのになんてジェントルマンなのでしょう。描き方がちょっと漫画っぽくもあり、実にユニーク。硬派な兄(左)と軟派な弟(右)って感じ。
底のプリント。ARCADIANはメーカー名です。
もう一つは蓋付きのケース。ロンドンのハマースミス自治区の紋章が描かれた1910年代のもの。ハマースミスはウィリアム・モリスが亡くなるまで住んでいた家、ケルムスコット・ハウスがあることでも有名な地域です。ケルムスコット・ハウスは以前モリス展で詳しく見たことがあり、この家から後年長い間愛される作品が多数生まれたと知り興奮しました・・・とモリスの話は長くなりそうなのでまたの機会があれば。
一番上の交差するハンマーと塔はハマースミス(Hammersmith)の地名を表していて、ハマー=ハンマー(トンカチ)、スミス=鍛冶屋だそう。
その下の花のような絵は何か不明ですが、紋章の下の「SPECTEMUR-AGENGO」はハマースミスの標語。ラテン語で「我々は行動によって評価されるべきである」という意味だそうです。
バックスタンプ。SHELLYはメーカー名です。
どちらもアクセサリーや香りのものを入れたりしてもいいですが、刻んできた時の長さとストーリーを感じられる佇まいなので飾ってときどき眺めるだけでも十分価値があります。
ご当地限定のものって今でも国内海外問わず魅かれます。インターネットで何でも簡単に手に入る現代ではありますが、便利ばかりではつまらない。わざわざ足を運ばないと買えないものこそいつまでも多彩であってほしいと切に願います。

Antique Crested China
mini cup φ3.7×H4.5cm ¥4,400
case 蓋φ7.5×底φ8×H5.5cm ¥4,400

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