お茶を淹れるとき、1人や2人暮らしの方はもちろん、家族やお客さんが多いお宅でも今は1人のティータイムを楽しむ人が増えている気がします。あと、これからの季節に淹れることが多くなるアイスティーはお湯の量がホットの半分でいいので小さなポットで事足ります。
でも、日本の急須には小さいものがたくさんあるのに、ティーポットとなると1人には大きなサイズのものばかり。たっぷり2人分くらいの容量ではあるものの、やっぱり1人には多い。家で長年愛用しているアピルコも400mlくらいの容量で2杯は飲むからまあいいかと使っていたのですが、最近ほぼ毎回余らせていることに気づきました(時間が経ってから、冷めたのももったいないので飲んでいます)。1杯分だけ淹れたらいいやんとお思いでしょう?ところが、ガラス以外のポットに半分くらいの量を目分量で注ぐのって難しいし、かといって家でわざわざ軽量するのも面倒なのです。よって、もう少し小さいものがあればいいなと思っていました。
いろいろと探す中で、雑貨屋の原点に帰ってPILLIVUYT(ピリヴィッツ)のラインナップをチェックしていたら、ありました。デザインもよくてTea For Oneにジャストサイズのポットが。
ピリヴィッツはフランスの磁器メーカーで創業は1818年。ということは、200年以上も続いている老舗です。特筆すべきは、自国以外で生産するヨーロッパの陶磁器メーカーが増え続ける中、今だに100%フランス製ということ。磁器土も硬質な数種類をオリジナルブレンドで使用、高温で2度焼きされるのでとても丈夫で耐久性があります。ゆえに業務用として使われることも多いブランドなのです。デザインは極めてシンプル、色も白のみというのが潔い。デイリーユースにぴったりではありませんか。
台形なので安定感があり、茶葉が上下に動きやすいためおいしく淹れられます。注ぎ口のキレも比較的いいです。
特に気に入っているのは最後の1滴(紅茶界ではゴールデンドロップといいます)を注ぐまで片手でも蓋が落ちないところ。蓋に引っかかりを作って本体とちょうど合わさるように考えられているのでかなり傾けても落ちません。ほら!これ、ほぼ垂直です。
ティーポットの蓋にはだいたい落ちにくいように引っ掛けがあるものですが、蓋の一部分にちょこっとだけというものが多く、それだと手を添えないと結局落ちてしまうのです。もう片方の手は茶漉しを持っていたいので、できたら片手で注ぎ切りたい(うるさくてすみません)。その点、こちらは全体にきっちり引っ掛かる工夫がされているので、安心してください、穿いてますじゃなくて、落ちません。
しかし、ここで問題があります。蓋を閉めてからだとどの向きで引っ掛かっているのかわからないので蓋をぐるぐる回して上げてみる必要があるわけです。それも安心してください、一発で合わせられます。なぜなら注ぎ口に向ければいい矢印がデザインを兼ねて施されているからです。この、機能と見た目のどちらも満たしたデザインがたまらなく美しい。ヨーロッパの陶磁器だと気になるバックプリントはこちら。白地に深いグリーンが洒落てますね。ARABIAもダークグリーン時代のバックプリントが一番好きです。
さて、肝心の容量は満水で300mlなので、ちょうどいい湯量(ポットに7〜8分目)で250〜260mlくらいです。茶葉の大きさで吸収する水分量も違いますが、だいたいティーカップなら1杯半、マグカップなら1杯分。先日ご紹介したMidwinterのカップならちょうど2杯分くらい入ります。
包丁の時もお話ししましたが、歳を重ねるにつれて必要性を感じるのは、身の回りのもののサイズダウンと軽量化です。「大は小を兼ねない」と身を持って思います。特に道具類はサイズダウンすると、しまったときに場所を取らない、洗い物が楽などのメリットもあります。自分だけのジャストサイズのティーポットがあるって、それだけでティータイムが無理なく豊かなものになる気がしませんか。茶葉から作るアイスティーもこの夏はぜひこれで挑戦してみてください。