開梱の楽しみ

お店の開業準備をしているときに一度フォントのお話をしました。今日はその続きといいますか、商品が届いて開梱するときに感じることのお話。

商品の納品がある日、自分が発注しているものなので中身は何が入っているのかもちろんわかっているのですが、なぜかワクワクします。なぜなら店頭には出せない輸送用の箱や外装の状態から、はては詰め方にまでクリエイティブがあるからです。

ブランドのロゴが入ったオリジナルの段ボールやテープを見ると全部とっておきたくなりますし(実際はとっておくのではなく再利用していることが多い)、パッキングの方法ひとつとっても、それぞれのつくり手さんの独創性が出ていて興味深い。そこにセンスと同時に機械ではない人の手が入っていることを感じて、うれしく温かい気持ちになることもしばしばなのです。本来は小売店としてお店の裏側的なことは見せるべきではないと思うのですが、あまりにもクリエイティブなのでご紹介したくなりました。

大きく分けて「グラフィックデザインにやられる場合」と「人の手を感じてほっこりする場合」の二つがあります。

まずは「グラフィックデザインにやられる編」。
フランスの老舗磁器ブランド、PILLIVUYT(ピリヴィッツ)の輸送用の箱です。

包装紙ならわかるのですが、段ボールに全面プリントしてあるのはめずらしいと思います。はるばる海を超えてやってきたのだと思うとさらに愛おしい。

次はこちらも老舗、スペインの刃物工房、PALLARÈS(パラレス)の段ボール。
左上の天地無用シール、「この面を上に」という意味で表記されているのは英語とスウェーデン語。アルファベットというだけでなんでこんなにカッコよく見えるのでしょうか。
そして、このパッキンのテープは・・・
Packman!Packmanとは行商人のことです。ゲームのパックマンを意識してこのデザインなのかは不明。このテープ欲しい・・・。

次は「人の手を感じてほっこりする」編です。
瀬戸ものの町、愛知県瀬戸市の陶磁器工房セラミック・ジャパンさんからの荷物。ちなみにセラミック・ジャパンさんからはムーンライトシリーズモデラートシリーズを取り扱いさせていただいています。
自社製品がプリントされた段ボールもいいのですが、わかりますでしょうか「空箱」と書いてくださっている心使い。この箱以外は中身が入っていて「空箱」は緩衝のためだけに入っているのです。見た目は同じなので開けなくても見分けがつくように、わざわざ「空箱」とマジックで書いてくださっている。これには感動しました。また、心使いだけではなく、ここにもクリエイティブを感じます。クリエイティブな方じゃないとこのパッキングはできないと思います。

割れ物が送られてくるときはどの工房・作家さんもほぼ新聞紙を使われます。新聞紙が割れ物の梱包材としては一番優秀なのです。そこに地域性が出ていておもしろい。セラミック・ジャパンさんは愛知県なので中日新聞。地方新聞は一面と、地元ならではの広告がないかもつい見てしまいます。
パズルを解いたあとを見つけて、梱包してくださった方が休憩時間に書かれたのかなあと想像すると、お会いしたこともないのになんだか急に近しい方のように思えてきます。そうなると、より一層商品を大事に開梱してていねいに売ろうという気持ちになります。

香川に工房を構えておられるseiken工作所さんは四国新聞。香川や讃岐新聞じゃなくて四国新聞っていうのがあるんだと知ったり。
竹田道生さんは京都新聞だったのですが、写真を撮るのを忘れてました。

最後はデザインとほっこり、どちらも感じる西宮の聖母修道院の緩衝材。焼き菓子の上や下に敷かれている緩衝紙がラッピングで使った包装紙のあまりを糊で貼り合わせたものなのです。
いつも段ボールを開けてすぐ、かわいくて一旦停止してしまうのと同時に、ゴミになるものをこうやってリサイクルする意識にも感心します。過ぎた月のカレンダーが使われていることもよくあり、ゴミって出るものじゃなく「ゴミ」にするかどうかを人が決めているだけなんだなあと気づいたり。

手書きのお手紙を入れてくださる方も多く、お茶のつくり手さんなら茶園の様子が書いてあったりして、それもうれしいし励みになります。

農作物ではよく「生産者の顔が見える」といういい方をして流通されることがありますよね。顔までじゃなくても人の「手の跡」が見えたらものへの向き合い方が変わると実感します。

小さな個人店が小さなつくり手さんから受け取る荷物だからこそ感じる部分ではありますが、商品以外に見逃したくないものがたくさん詰まっている箱なのです。
(早よ検品しろと注意するもう一人の自分もいます)

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